本日は業界内でも少数派の女性の船乗りについて記事を書きました。
多様性が尊重される昨今における女性船員の現状について。
女性の割合は非常に小さい
船員の男女比ですが,
外航船だと,若手船員100人につき2〜3人。
船長や機関長などのシニアクラスだとほぼ皆無です。
先日,日本郵船で初の女性船長が誕生したニュースが話題になりました。
男性が船長になってもニュースになることはありませんから,
業界内でもセンセーショナルな出来事でした。
まだまだ女性船員の割合は少ないですが,
ダイバーシティ重視のご時世ですから,女性船員の数は増加傾向にあります。
活躍の場が広がっているのは事実です。
プライベートは大丈夫?
外航船の場合,男女にかかわらず個室が与えられます。
また,以前はトイレやランドリーを男女で分けることはほとんどありませんでしたが,
女性船員が増加する現在ではトイレは男女別,ランドリーにはレディースタイムが設けられるなど,
プライベート面を配慮した措置が一般的になりつつあります。
外航海運会社の場合,乗船前の研修でパワハラやセクハラについて,
しつこいくらいに研修を受けます。
外航海運会社というのはグローバルであることが前提ですから,
多様な価値観を受け入れる素養がなければ務まりません。
体力面では不利
女性は男性と比較すると体力の面で劣ってしまいます。
船員は力仕事が多いので,その面では女性は不利にならざるを得ません。
その他,高温や低音など体力を要する環境に晒された場合,男女の差が露呈することが少なくありません。
これは甲板部・機関部に関わらず起こることで,多くの女性船員は悔しいと感じてしまうようです。
機械による自動化が進んでいるとは言え,
男女がお互いに,体力面の差を工夫して補う必要があるのが現状です。
上長が男女間の差をよく理解していれば良いのですが,シニアクラスの女性船員はまだ限られています。
皆が男女の差について共通認識を持つようになるにはまだ時間がかかりそうです。
紅一点の損得
私の周りの女性船員では「自分以外,男しかいないので気を遣われることが多い」という意見が多数派に感じます。
セクハラやパワハラの不祥事が頻繁に取り上げられるご時世ですが,
紳士が多いのも事実ですので嫌な思いを強いられたという話はほとんどないようです。
しかしながら,紳士であるとは言え,女性ならではの悩みは相談しづらいというのは本音です。
「それを言い訳に仕事から逃げたくない!」というジレンマに悩む女性船員も多いです。
生理が重い人は外航船員として働く上では,比較的苦労するかもしれません。
現代の船では,生理痛で休んだ場合に,替えがきくような体制には現状なっていません。
乗れる船種が限られる
女性船員は治安の悪い港や国に行く船には乗せてもらえません。
例えば自動車運搬船の場合,セキュリティが万全でない港に行くことが多いです。
自動車を船に積み込むドライバーは現地の人を雇います。
現地の港湾関係者は,輩が多いです(直接的な表現は避けます)。
会社としても身の危険が及びうるところに社員を行かせたくはありません。
万が一のことが有れば,双方に多いなマイナスとなります。
以上の理由から,女性船員は比較的治安の安定した港に行く船にしか配乗させてもらえないのが現状です。
女性船員が配乗される確率が高いのは, LNG船や石油タンカーです。
LNG船や石油タンカーは,積荷地で接岸すら無いことが多いですから,治安面では安全と言えます。