とある外航船員の本音

外航海運会社で機関士をしています。

船に油を補給する船〜バンカーバージ〜

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船に油を補給する船,バンカーバージについて記事を書きました。

 

 

 

 

船にはガソリンスタンドがない

自動車は燃料のガソリンが無くなったときは,ガソリンスタンドに行きます。

船にはガソリンスタンドがありません。

 

船の場合,燃料の重油がなくなったときは,

重油を積んだ船を本船に横付けして,その船から重油を補給します。

 

この油を補給するための船をバンカーバージといい,

外航船では,油を補給する行為をバンカーと呼びます。

 

船の世界ではガソリンスタンドの代わりに,

バンカーバージを本船に横付けして油を補給します。

様々な船舶に対応がしやすいため,このような方法が取られています。

 

バンカーをする場所は日本とは限りません。

むしろ日本は油が高いので,特別な理由がない限り,外国で取ることが多いです。

例えば,シンガポールは地理的に様々な船の拠点となっており,バンカーする確率が高いです。

 

他にもタイ,オーストラリア,パナマなどで油を補給します。

 

油の補給は二等機関士が担当

バンカーバージ側の船員と取引を行うのは船員の仕事の一つです。

外航船の場合,二等機関士が担当します。

 

二等機関士はバンカーの際に以下のことを確認しています。

・本船のどのタンクに油を入れるか 

 船の傾きなどを考慮している

・事前の契約どおりの油(量,性質)が送られているか

 サウンディングを行って油の量を計測する。フローメーターの値と一致しているか確認。

・バンカーバージから送られた油の量と本船に送られた油の量が一致しているか

 二等機関士は本船の燃料タンクを計測します。バージ側の油の量も計測しに行きます。

 バージ側に行く手段は様々です。はしごで降りたり,サービス用の船で移動します。

 

送油中の作業内容

油を補給するためにバンカーバージと本船をホースでつなぎます。

本船側のホースで繋ぐ場所をマニホールドといいます。

接続する時は油を船外に流出させないように細心の注意を払います。

 

油はバージ側のポンプで組み上げます。

正しく接続されたことが確認されたらバージ側の船員に頼んでポンプを起動してもらいます。

 

油の補給にかかる時間は送油量によりますが,

長いときで6~8時間もの時間を要するときがあります。

送油中はマニホールドで異常が起こらないか常に監視して置かなければならないため,

交代で監視を行います。

燃料タンクの通気口から送られた油によって空気が押し出されていることを30分おきくらいに確認します。

また,燃料系統のバルブから漏れが生じていないかも確認します。

他にも,油の性質を検査するために試料用の油を別に採取する作業があります。

万が一,おかしな油が送られて船内設備に不具合が発生した時の証拠となります。

 

 

予定量の油が送られたら,バージの送油ポンプを止めてもらいます。

この状態ではホース内に油が残っている状態です。

ですので,ホース内の油を空気圧で本船側に送ってもらいます。

 

最後の一滴まで無駄にはできないというのもありますが,

ホースを外す際に油が船外に漏らないようにするという意味もあります。

 

詐欺行為

日本のバンカーではほとんどありませんが,

外国でバンカーした場合,詐欺まがいのことをする業者も少なからずいます。

 

例えば,油の量をごまかすために,

重油に空気を吹き込んで泡立たせることにより,

送った油の量をかさ増しする行為などがあります。

泡立った重油の様子から,これをカプチーノバンカーと呼びます。

 

他にもバージから本船に流れた油の量を計測する装置に細工をしたり,

強情なバンカーだと「XXXトン足りないだって??我々はちゃんとYYYトン送ったぞ。そちらの計測が間違っている!」などと譲らなかったりします。

 

契約通りの油が送られたこと確認する書類は機関長の承認が必要なので,

ここで機関長の胆力が試されます。

 

日本で補油した場合はそのようなことはほとんどありません。

むしろ少し多めに油を送ってくれたりするくらいです。