とある外航船員の本音

外航海運会社で機関士をしています。

機関士の職務〜海洋生物付着防止装置(MGPS)の運用〜

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今回は海洋生物付着防止装置(以下MGPS)の運用について記事を書きました。

 

海洋生物付着防止装置とは,その名の通り,

海水の配管に生物が付着しないようにするための装置です。

 

英語名のMarine Growth Prevention Systemの頭文字をとって、MGPSと呼ぶのが一般的です。

 

 

仕組み

MGPSの方式は薬品投与式,銅イオン式,塩素式などありますが,

今回は海水を電気分解する方式の運用について紹介します。

海水に電流を流して塩素と水酸化ナトリウムを生成し、

次亜塩素酸ナトリウムを発生させることで海洋生物を殺します。

 

日々の確認項目

海水の流量

機関士は毎日,MGPSに通す海水の流量をチェックしています。

海水の流量は船速の影響を受けるため,日々の確認が重要です。

 

海水はスクープ,もしくはポンプによって船内に取り込みます。

スクープとは船底にある穴で、船の速力を利用して海水を船内に取り込むものです。

船の速力を利用するため,船速が小さい時はスクープは使用できません。

船速が小さい時はポンプによって海水を取り込みます。

 

流量を調節する必要がある時は、バタフライ弁の開度によって調節を行います。

 

海水に流す電流値

MGPSでは海水を電気分解して,

次亜塩素酸ナトリウムを発生させていますが,

海水の流量によって必要な次亜塩素酸ナトリウムの量が変化します。

次亜塩素酸ナトリウムは濃すぎても薄すぎてもいけません。

 

そのため,海水の流量に応じて電流値を調整する必要があります。

例えば,海水の流量が少ないのに過剰な次亜塩素酸ナトリウムを投与すると,

配管の腐食の原因になってしまいます。

 

MGPSを詰まらせないために

MGPS関連の配管は海水が流れています。

海水の配管は不純物や塩分によって,頻繁に詰まります。

配管を詰まらせないために,こまめにストレーナの掃除をするのが重要です。

 

しかしながら,こまめにストレーナを掃除していてもMGPS関連の配管は詰まります。

詰まったら配管を取り外して内部を掃除しなければなりません。

 

MGPS関連の配管は機関室の一番下のフロアについています。

タンクトップ周辺は配管がごちゃごちゃしているので作業性が悪いです。

場合によっては,配管を取り外すために別の配管を取り外すこともあります。

 

詰まらせないための工夫としては,

詰まりやすい配管の前後をこまめにドレンアウトして,

内部に溜まった固形分を排出してやることです。

 

MGPSの装置自体にもドレン排出のラインがあるので,

内部に溜まったゴミを頻繁に出してやりましょう。