とある外航船員の本音

外航海運会社で機関士をしています。

機関士は何をしているのか? 燃料油編

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燃料油

船が推進力を得るには燃料油が必要です。

その燃料油を管理するのは機関士の仕事です。

今回は「船の中で機関士は何をしているのか?」というテーマで,

燃料油について記事を書きました。

 

 

 

 

燃料油の重要性

船のエンジンは燃料油を焚くことで,推進力を得ています。

また,発電機を回すためにも燃料油は使われます。

燃料油無くして船を動かすことはできません。

 

自動車でいうところのガソリンですから,

その重要性は想像に難くないと思います。

 

船では重油が使われる

船の燃料油として一般に重油が使われます。

重油とは石油を精製した時に得られる重質の油です。

 

重油の中でもC重油という種類の油が使われることが多いです。

 

重油は常温ではドロドロとしたタール状の物体ですから,

そのままでは燃料油として使うことはできません。

これを130℃程度まで温めることにより,

サラサラにして使用しています。 

 

機関士の役目

温度の管理

燃料油の管理するのは機関士の役目です。

燃料油がエンジンや発電機に適切な状態で供給される環境を,

常に確保しなければなりせん。

 

上述の通り,重油を使用するためには適切な温度であることが求められるので,

機関士はタンク内の温度や,燃料油の配管の温度に常に注意を払っています。

 

残量と品質の管理 

船の中には燃料油のタンクがいくつもあります。

燃料油や積地によって品質が異なります。

 

品質の異なる油が混ざると不純物が生じるなどの不具合が発生するので,

そのようなことが起きないように適切な管理が必要です。

 

補給の予定を決めたり,

実際に補給の作業を行うのも機関士の役目です。

 

燃料油を清浄に保つには

セットリングタンク 

燃料油はまず,船底のタンクからセットリングタンクに送られます。

セットリングタンクは澄ましタンクとも呼ばれ,

ここでは燃料油に含まれる不純物を沈殿させます。

 

汚れが沈殿した油は清浄機に送られます。

 

清浄機

清浄機では,遠心力によって油に含まれる不純物を除去します。

詳細については以前の記事を参照してください。

www.adati.work

 

 

汚れが溜まって詰まってくると油が漏れてきたり,

異音が発生して機械が故障するなどのトラブルの原因となります。

 

サービスタンク

清浄機を通って更にきれいになった油は,サービスタンクに送られます。

サービスタンクから主機や発電機の配管に供給されます。

ですので,サービスタンクには常に適切な量の燃料油が確保されていなければなりません。

機関士はサービスタンクの残量が異常に低下していたりしないか注意を払っています。

 

燃料油予熱器とストレーナ

サービスタンクから主機や発電機に送られるまでの配管の途中に,

燃料予熱器という装置が備えられています。

ここでC重油は130℃くらいまで加熱されます。

130℃程度まで温められたC重油はサラサラになります。

 

何故サラサラでなければならないかというと,

燃料油は霧状に噴射されるので,

ドロドロの状態ではそれができないからです。

 

サラサラになったC重油はストレーナーという濾し器を通ります。

ここで更に汚れが取り除かれます。

 

主機や発電機に適当な種類の油が送られているか管理する

主機や発電機に適当な種類の重油が送られているか管理しなければなりません。

 

重油にはC重油とA重油という種類があります。

 

C重油は常温でドロドロとしており,

130℃程度まで温めて使用する必要があります。

また大気汚染の原因となる硫黄分が多く含まれています。

その分価格が安いので,大洋航海中に使用されるのが一般的です。

 

A重油は常温でサラサラですので,

温めなくても使用することができます。

着火性が良いため,エンジンの発停が頻繁に行われる出入港時は

C重油からA重油の配管に切り替えます。

 

C重油とA重油を切り替えるのは機関士の仕事です。

 

A重油は比較的綺麗な油なので,C重油に混ざってもあまり問題になりません。

しかしC重油は低質な油なので,A重油に混入するのは問題です。

そのような事態が発生しないようにバルブの操作の手順やタイミングを理解しておく必要があります。