船乗りの醍醐味とも言える長期休暇について記事を書きました。
これなくして船乗りは語れないと言っても過言ではありません。
外航船員の休暇は日本一長い?
外航船員の休暇はとても長いです。
1週間?3週間?
いえいえそんなものではありません。
乗船した期間にも寄りますが,3ヶ月程度の長期休暇を得ることができます。
日本でこれだけ長いまとまった休暇を得ることができるのは外航船員だけだと思います。
あったとしても自営業とか経営者でしょうか。
漁師も捕らない季節は丸々休みになるそうですね。
しかし,会社員という安定した身分で長期休暇が得られるのは外航船員だけだと思います。
しかも休暇中も給料がもらえます。
船乗りでお金に困っている人は見たことがありません。
船乗りが経済的に恵まれているのは何故でしょうか?
船乗りの給料は最低賃金法で保護されています。
職員と部員で異なりますが,職員の最低賃金でも大卒の一般的な初任給と同程度か,それ以上であることがわかります。
これに乗船手当や航海日当などが上乗せされるので,
大手海運会社の場合,新人の船乗りでも月収で40〜50万円くらいは貰っているそうです。
数ヶ月の休暇中で何をしているのか?
「船乗りの休暇は長い!」と上述しましたが,皆それだけ長い休暇で何をしているのでしょうか?
そこまで休暇が長いと時間を持て余してしまう人もいるかもしれません。
実際,有意義に時間を使えず「毎日飲み歩いて放蕩生活をしてたら次の乗船を迎えた」という話も聞いたことがあります。
船乗りの長期休暇で一番多いのが海外旅行ですね。
LCCなどで海外に簡単にいける時代になったのも一因だと思います。
乗船中に乗組員同士でどこの旅行先が良かったか話になる時もあります。
若者には東南アジアが人気ですね。
物価が安いので長期滞在のバカンスを楽しむにはもってこいでしょう。
友人に聞いた話ですが日本人は色白なので東南アジアの女性にモテるそうです。
乗船中に貯まったお金もありますし,羽振りがいいというのもあるでしょう。
年配の方になると国内旅行をする人が多くなります。
「 温泉巡りが趣味」というキャプテンや機関長は多いですね。
車が趣味でドライブに行く人も多いです。
外航船員は休暇中も家に帰らない?
「外航船員は休暇で海外旅行に行っている」と聞くと
「外航船員は仕事で海外に行っているのに,休暇中も海外に行くのか?」と思われる方がいるかもしれません。
外航船員は言葉の通り世界の海を股にかけています。
世界各地の港に行く機会があります。これは外航船員だけの特権です。
しかし近年,技術の向上や経営の合理化が進んだ影響で,船舶が入港して出港するまでの時間が大幅に短縮されています。(入港から出港するまでの時間を停泊時間といいます。)
30年くらい前までは停泊時間は5日間くらいあったらしいのですが,最近では数時間〜1日程度です。
停泊中にしかできない作業などもあるので,上陸できる時間は更に少なくなります。
そのため,「せっかく寄港したのに上陸できない」 ということもザラにあります。
船種によって上陸のチャンスは異なる
また船の種類(これを船種といいます)によっても,上陸のチャンスは異なります。
石油タンカーに乗船した場合,日本と中東を往復する航路が多いです。
中東の国々は治安の問題で上陸許可が起きることはほとんどありません。
タンカーに石油の積み込み時は,船が岸壁から離れた状態で,パイプラインを通じて行うことが多いそうです。
一方,上陸のチャンスが多いのは自動車運搬船(PCCといいます。Pure Car Careerの略)です。
PCCは貨物の性質上,世界の様々な港に寄港することが多いです。
外航船員になって世界中の国々に行きたいなら,PCCがおすすめです。
PCCを専門として海運会社もありますので,たくさん上陸したい人はそのような会社に就職すると良いでしょう。
たくさん上陸したいなら航海士より機関士のほうがいい?
航海士と機関士でも上陸のチャンスは異なります。
航海士は当直制のため,最大でも8時間しか自由な時間はありません。
一方,機関士は停泊中の作業が無ければ基本的に自由です。
上陸のチャンスを高めたいなら,機関士を目指したほうが良いかもしれませんね。
結局,若手船員に自由はない
悲しいかな,若手船員は上陸のチャンスを得ることができても,上長にお使いを頼まれることが多いです。
外国でお使いを頼まれると,目的の品が見つからず時間を浪費してしまうことが多いです。
そして結局,帰船時刻を迎えてしまうということも少なくありません。
ちなみに「帰船時刻に遅刻するとクビになる」というのが船乗り業界での通説です。
しかし,即刻クビにしてしまうと事務手続や新たな船員の確保など面倒くさい仕事が増えるので実際はそんなことはないと思いますけどね。
「時間を厳格に守るのが大事である」という教訓の意味合いが強いと思います。