とある外航船員の本音

外航海運会社で機関士をしています。

機関士は何をしているのか? 造水器編

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船内では大量の真水が必要です。

 

真水は,主機や発電機の冷却水として利用したり,

ボイラーで蒸気を作るために使います。

船員のシャワーや飲用水としても真水は必須です。

 

大量の真水が必要ですから,その多くは船の中で作られています。

 

真水を作る装置を造水器といい ,その運転管理は機関士が行っています。

今回は,機関士がどのように造水器を運転管理しているのか記事にしてみました。

 

(ちなみに船業界では真水のことを清水といいます。以下清水で説明します。)

 

 

造水器 

清水は海水を蒸発して生成する

造水器では,どのように仕組みで清水が作られるのでしょうか。

造水器の中では海水を沸騰させ、蒸気を発生させています。

発生した蒸気を蒸留することで清水にしています。

 

沸騰と聞くと熱々になった水をイメージするかもしれません。

しかし,実際の造水器の中はそんなに熱くありません。

メーカーによって異なりますが大体40℃前後。人肌より少し温かい程度です。

 

そのような低温で,どのように海水を沸騰させているのでしょうか?

 

造水器の中は真空に保たれている

40℃という低温で水を沸騰させるために,

造水器の中は真空に保たれています。

 

水は気圧が下がると沸点が下がる性質があります。

登山をする人には常識かと思いますが「富士山の山頂では水は85℃で沸騰する」というのが有名です。

 

造水器ではこの性質を利用して海水を低温で沸騰させています。

40℃で沸騰と言われても直感的にイメージしにくいかもしれません。

 

造水器には小窓が設けられていて,

ちゃんと沸騰しているか確認することができます。

 

主機の排熱を利用して海水を温める

造水器では40度前後に温まった海水を沸騰させています。

 

温かい海水は主機の排熱を利用して作られます。

具体的には、温かくなった主機の冷却水を利用しています。

 

主機の冷却水は、主機を冷却した後は80〜90℃ほど熱を持っています。 

この熱を無駄にしないために、造水器で利用しているのです。

 

80〜90℃の冷却水によって,海水を40℃前後まで温めます。

温まった海水を真空の造水器に送って沸騰させています。

 

造水器のメンテナンス

造水器も,他の機器と同様に,定期的なメンテナンスが必要です。

造水器のメンテナンスは三等機関士の担当です。 

 

メンテナンスの内容はほとんどが内部の掃除です。

 

造水器の内部では,海水を蒸発させているので,大量の塩が付着しています。

塩が付着すると熱伝導率が低下します。結果的に造水器の効率が下がります。

 

造水器の効率低下を防ぐために、定期的に内部を掃除します。

 

メンテナンスを楽にする工夫

海水を蒸発させると造水器内に大量の塩が付着します。

機関士は,付着した塩を掃除するメンテナンスをしなければなりません。

 

付着した塩を掃除するのは大変です。一日がかりの仕事になります。

少しでもメンテナンスを楽にするために,ある工夫をしています。

 

造水器に送る海水に薬品を入れて,塩が付着しにくくしているのです。

薬品は多すぎても少なすぎてもいけませんから,その量を調節するのも機関士の仕事です。